信長と十字架―「天下布武」の真実を追う (集英社新書)



信長と十字架―「天下布武」の真実を追う (集英社新書)
信長と十字架―「天下布武」の真実を追う (集英社新書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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「イエズス会の陰謀」?

 1932年に生まれ、独学で戦国史を研究した理学修士が、「自国の歴史の真実」を明らかにするために、2004年に刊行した本。本書によれば、イエズス会を中核とする「南欧勢力」は、大友宗麟への軍事的・経済的援助を活用しつつ、畿内に清原氏一族を中心とする初期キリシタン人脈を形成し、将軍足利義輝・義昭擁立に深く関与した。義昭擁立運動以降、キリシタン人脈とつながった織田信長は、おそらく清原枝賢を通じて天下布武(将軍に代わって朝敵を討ち、国内を平定するという錦の御旗)印を採用し、またキリシタン人脈を通じて決勝綸旨を獲得し、大友宗麟やイエズス会との提携の下、仏教を弾圧し、朝廷や将軍に恩を売りつつ、天下統一へ邁進する。しかし、自己神格化によってイエズス会と決別した信長は、改暦問題などの朝廷への干渉強化によって公家の反発を買い、公家と提携したイエズス会によって本能寺の変および秀吉の天下が仕組まれたという。本書は、以上のような「南欧グローバリゼーションの一端」を、人脈の分析、史料間矛盾への疑問、天下布武理念分析によって、史料に基づき「傍証」したものである。しかし、推測(「影の黒幕」、決勝綸旨の年代、印形の類似性、秀吉と光秀の関係など)や矛盾(天下布武理念への禅僧の関与、信長へのイエズス会の武器・経済援助事例の少なさなど)が各所に見られ、また他の解釈も可能である(フロイスのレトリックなど)にもかかわらず、著者の叙述は概して断定的である。信長がキリシタン人脈とつながっていたことは分かるが、後者が「黒幕」であるとの根拠は希薄である。無理に史料の裏を読むことによって、自己の仮説に引きつけて、強引に一貫性を持たせたという印象が強い。陰謀論に近いこの仮説を全否定はできないが、「真実」と断定することは現時点では不可能である。
可能性ゼロ%とは申しませんが…。ちょっと理解不能。

数年前に読んだものの全く印象に残らず、このたび再読しました。信長はポルトガル商人やイエズス会をはじめとする南欧勢力のために天下布武を推進し、方針の相違から本能寺の変で抹殺されたとか。歴史の裏舞台の話ですから、今後に新たな証拠が発見されればその可能性はゼロ%とは申せませんが、読み進むにも若干苦痛を感じるほどに推考に無理があるように思います。
 
信長の近代的な兵器や思想がキリシタン系の影響と支援を受けたもので傀儡であったというなら、戦後の経済復興政策や現在のイラク戦争支援を行う日本は完全に米国の傀儡なんですかね? 南欧グローバリゼーションの定義が定かでなく、貿易的独占や領土拡張など狙いに関する検討がなされていない上に、仮にどちらだったとしても、いきなり信長を支援して傀儡政権体制を推進するメリットが分からない。方針の相違から、信長を排斥して秀吉の切り替えたといっても、その後の秀吉はキリスト教を弾圧し、朝鮮出兵も敢行。その後の江戸時代からは鎖国に突入しており、「南欧グローバリゼーション」という不明の目的に対して良い展開とは全くなっておらず、もしイエズス会が信長ほか日本の権威者をコントロールしていたのならお粗末極まりない展開になっていると思うんですけど。
 
しかも、なぜ宗教人のフロイスなどが派遣されているのでしょう? 彼は実は軍事顧問だったとか? 軍事的顧問やその存在が必ず必要になる筈ですがその存在は類推すらされていない上、そもそもスパイ的な活動も含めて現地政治で暗躍するには、どこの世界でも現地のインサイダーとなって裏世界に通じている必要がある訳で、言葉の問題を含めて朝廷や信長側近の各武将とイエズス会等が常にヒソヒソやっていたとは思い難いんですが。
 
また、仮に傀儡であったとすれば、フロイス等が母国に持ち帰るのも伝聞や文化的な絵画などではなく、協定条約的な機密文書や侵犯計画の進捗報告などが混じっていても良さそうなものだし、傀儡の信長をわざわざ「安土の王、日本の王」と呼ぶ必要も安土城を「我々の国の建物より壮麗」などと持ち上げた報告をする必要もないでしょう。
 
腑に置ちないことが多過ぎて、「真実を追う」というより、ただの空想といった印象です。
ただ、日本は島国のためか歴史の考証が内国のみに向きがちで、海外の中の日本の位置付けが欠落していることはあるでしょう。そういう視点の問題提議は果たしていると思います。でも、それだけかな。
フィクションとしては面白い

ご本人は学術的裏づけがあるように書いているが、たんなる推論と思う。

立花説では、信長が尾張を半分しか征服していない時に、正親町天皇から天下を仰せ付けられた、ということになっている。それは、イエズス会とその関係者(朝廷関係者)の企みであった・・・と書かれている。が、そんな時点から、イエズス会はどうやって信長に目をつけたのだろうか?最初からキリシタン大名に天下統一させたほうが早いのじゃないでしょうか?

面白いフィクションだし、物語にすれば楽しめそうだが、まったく説得力は感じなかった。

信長も朝廷も「南欧勢力」の意のままだったというのはいくらなんでも、、、

著者は大学の数学科出身で、子育てを終えた後、古文書学を修め、専門家の古文書の読み方の誤りを指摘し、信長と朝廷の関係に関して新説を唱え、遂には人文科学で博士号を取得した、現代女性版伊能忠敬とも言うべき尊敬に値する人である。本書でも「天下布武」の意味を「天下」に関しては頼朝の時代に、「武」に関しては春秋左氏伝に遡って追究する等、色々教えられることは多い。しかし、本書によれば、信長は天下統一の決意の時点からイエズス会を先兵とする南欧勢力の影響・支援を受けて事業を進め、信長が意に沿わなくなると南欧勢力が朝廷も関与する謀略を立てて信長を殺し、さらに謀反人が天下人ではまずいので謀反が起こることを知らされていた(そして南欧勢力の意に沿うと思っていた)秀吉に光秀を討たせたということになるが、いくらなんでも南欧勢力の力をかいかぶりすぎだろう。著者はかつて朝廷黒幕説論者であったが、本書では南欧勢力黒幕説に軸足を移した。朝廷黒幕説では説明しきれなくなったからか。しかし、南欧勢力黒幕説を採りえないことは鈴木眞哉・藤本正行両氏の良書「信長は謀略で殺されたのか」の第六章「雄大にして空疎な『イエズス会黒幕説』」で論破されている通りである。一点、私が本書の不備な点を挙げると、本能寺の変はイエズス会が黒幕で朝廷はこれに関与し(具体的には光秀に信長討伐命令を出した)、秀吉は変の起こることを事前に知らされていたということになるが、これでは朝廷までイエズス会の意のままだったことになる。その両者、そして秀吉をいかにして結びつけたかの説明が弱い。商人が三者の間を行き来したという事実だけでは証拠として不十分だろう。南欧勢力に着目するなら、何故その究極の目的(植民地化)が日本等東アジアで成功しなかったのか、そちらの方向の研究が進むことを期待する。キリスト教弾圧は秀吉の時代から始まるのである。
海外勢力抜きでは日本史は語れない

この本は16世紀以降の日本の歴史は、全て海外勢力との絡めて、検証すべきである、という事を教えてくれた唯一の本である。グローバリゼーションという言葉が普及して久しいが、海外勢力が国内勢力に影響を持ったのは、いつ頃なのか。それは正に信長の時代である。面白いのは、未だに、信長暗殺の背後に、外国勢力がいることが、歴史学上の主流になっていないことだ。よって、その考え方も学校では教わらない。坂本龍馬暗殺しかり、田中角栄の失脚しかり、今でも日本の政治は海外の影響を受けない事になっている。この本は、現代社会を見つめる上でも、新しい視点を与えてくれた。



集英社
信長は謀略で殺されたのか―本能寺の変・謀略説を嗤う (新書y)
集中講義織田信長 (新潮文庫 (お-70-1))
完訳フロイス日本史〈2〉信長とフロイス―織田信長篇(2) (中公文庫)
二人の天魔王―「信長」の真実 (講談社文庫)
真説 本能寺 (学研M文庫)




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